佐藤卓展「日常のデザイン」@水戸芸術館



…という訳で、はるばる茨城県は水戸市まで出かけて観て参りました、佐藤卓「日常のデザイン」展。
天へと伸びる巨大な塔のオブジェがシンボルとしてそびえる水戸芸術館。
コンサートホールや、通路に面している上に全面ガラス張りで、こりゃ出席者も落ち着かないよなというパーティールーム(この日も結婚披露宴真っ最中)などが併設され賑わう中、展示が行われている現代美術ギャラリーに一歩足を踏み入れると、外の世界とは一変して静かな空間が広がる。
まず我々を出迎えるのは、高さ2mはあろうかという巨大な、エスビー食品のブラックペッパーのオブジェ(記念撮影できず残念!)。
最初の部屋「デザインの実験室」には、他にもキシリトールガムのペンギンや、埋木(うもれぎ)と呼ばれる古代の樹木の切り株が置かれていたり、極小の文字の上に水滴を落として見せるゆらぎの装置など、佐藤氏のデザインワークの過去、現在、そして今後の方向性を示唆するような作品が展示されている。
これらから感じるのは、ダイレクトに脳に伝わる強いメッセージ。
道端に捨てられたキシリトールガ
ムの包み紙を、あたかも昆虫の標本のように収集箱に丁寧に納めた展示。
自らがデザインしたパッケージ、缶、瓶などを破壊して撮られたポスター。
大量に生産し、消費され、やがて消えて行く。ただそれでいいのか。
私たち現代人は、何か大切なものを忘れかけていないか―――この問いかけが、この後随所で繰り返し繰り返し響いて来ることになる。
次は、4つの小部屋からなる「デザインの解剖室」。
氏が企画段階から携わった『ロッテキシリトールガム』『富士フィルム写ルンです』『タカラリカちゃん』『明治おいしい牛乳』について、デザインが決まるまでの変遷のみならず、その本体の素材や構造などの細部に至るまで丁寧に解説されている。
おいしい牛乳の部屋で、牛に食べさせている餌まで採集瓶に入れて展示してあるのには参りました(苦笑)。
最も観るのに時間を費やしたのが「デザインの部屋」。
独立してから氏が手掛けて来た52種の仕事について、丁寧な解説文とともに展示されていた。
佐藤氏の受ける仕事の幅広さ(えっ、これも?という、あまりに
生活に馴染んでいる商品の連続。しかも『湖池屋ポリンキー』やら『コーセーコスメポート』やら『神戸コロッケ』やら、ジャンルも多岐に渡る)にただただ脱帽。
作品に添えられた彼の言葉の中にも、琴線に触れるような印象的なものが多かった。
「自分を客体化できない自己中心的な人間には大量生産品の飲食のデザインはできない」
「デザインの決定において、民主主義はあり得ない」
「デザインは人である。力のある1人の人間が責任を持つということ」
「制作意図は後付け。アイデアというものは脳の中に交差点ができるようなもの。デザインはこの瞬間(ひらめき)を待っているようなところがある」
「デザインは使い捨てにすることもできますが、財産として残すこともできます。
さて、どちらを選ばれますか?」
その後の「言語博物室」(氏の集めているアンティークの人形他、趣味の品を『かわいい』などのテーマに添って展示)で、「へんてこ」な玉ねぎに顔がついた置物に添えて。
「「このような一般的に何の価値もない「へんてこ」な
物の何が自分を惹きつけたのかを考えることが習慣となっている」
佐藤卓という1人の人間の頭の中に、無限に広がる宇宙。
物事を俯瞰で捉え、脳内宇宙と交信し、最もふさわしい形で商品を送り出す。
その世界の一端に触れられただけでも、わざわざ水戸まで観に来た甲斐がありました。
*佐藤氏が今回の開催にあたり地元の業者と実現させた『おみやげプロジェクト』。“チョコ★いも”と“納豆チョコ”。さて、お味は??


Comments